「Whisky」と「Whiskey」ラベルのスペルの違い
ビンのラベルをよく見るとウイスキーのスペルが2種類あります。
Whisky |
Whiskey |
スコッチ(スコットランド) |
アイリッシュ(アイルランド) |
カナディアン(カナダ) |
アメリカン |
ジャパニーズ(日本) |
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タイワニーズ(台湾) |
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インディアン(インド) |
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この2つの違いは、それぞれ「ウイスキー発祥の地」を主張するスコットランドとアイルランドの対立に根差しているという説が有力です。これら2地域とならぶウイスキー大国アメリカでは、「Whiskey」が主流です。これは、創業者に、アイルランド出身者が多かったためだと言われています。とはいえ、完全に統一されているわけではなく、「メーカーズマーク」は、アメリカでも「Whisky」の表記を採用しています。これは先祖がスコットランド出身のため。
日本は、国産ウイスキーの誕生に中心的な役割を果たした竹鶴政孝氏が、1918年にウイスキー製造を学びに行った留学先がスコットランドであったことが影響しているでしょう。
インドは、イギリスの植民地だったからと思われます。
【誕生】
蒸留技術は文明発祥の地メソポタミア地方で紀元前3500年頃には行われていたらしい。当時は花、草を原料に香油や香辛料を精製していた。
その後、10世紀頃にイタリアでワインからアルコールを蒸留。
1405年アイルランド「クロンマクノイズ年代記」に「命の水」記載
1494年スコットランド王室財務記録に「アクアヴィテ」記載
どうもこの頃に誕生したらしい。当時は修道士が造っていたと言う。
生まれてから500年以上も経つのですね。
500年物のウイスキー、あったら飲みたいなぁ~♪
【原料による分類】
① モルトウイスキー |
大麦麦芽のみ |
② グレーン 〃 |
大麦麦芽、トウモロコシ、小麦、大麦など |
③ バーボン 〃 |
トウモロコシ51%以上、 |
④ コーン 〃 |
〃 80%以上 |
⑤ ホイート 〃 |
小麦 51%以上 |
⑥ ライ 〃 |
ライ麦 51%以上 |
蒸留方法、樽貯蔵年数も違い①のモルトウイスキーは単式蒸留器で2~3回蒸留、3年以上貯蔵に対し、
②~⑥は連続式蒸留器での蒸留が多く貯蔵年数も規定が無い(②グレーンだけは3年以上)。
但し、2年以上樽貯蔵させた③~⑥は頭にストレートと表示できる。
例:ストレート・バーボンW
ストレート・ライW
W:ウイスキーの略以下同じ
【混ぜ具合による分類】
① シングルモルトウイスキー |
単一の蒸留所で造られるモルトW |
② ブレンデッドモルトW |
複数の①を混和したもの |
③ シングルグレーンW |
単一の蒸留所で造られるグレーンW |
④ ブレンデッドグレーンW |
複数の③を混和したもの |
⑤ ブレンデッドW |
モルトWとグレーンWを調合したもの |
ブレンデッドウイスキーの誕生
19世紀半ば、消費者の嗜好に応じた新しいタイプが求められていた。モルトウイスキーは風味が強く個性的でスコットランド以外ではあまり好まれず、反対にグレーンウイスキーは飲みやすいが風味に乏しく、人気が今ひとつ。この両者をブレンドすることにより、互いの欠点を補い「スコットランド人以外でも飲める酒を」と考え出された(ジョニ黒、シーバスリーガルなど)。
【樽による分類】
樽の酒質に及ぼす影響は5割~7割とも言われています。バーボンだけは新樽を使うことが義務付けられていますが、他は何かしらの酒類が詰められていた樽を再利用し熟成調整しています。
◆シェリー・カスク
スペインから樽で輸入されたシェリーの空樽をスコッチの保存に使用したことから始まったらしい。バーボン樽よりコストがかかるため、製品は高価になることが多い。主にドライ・オロロソ・シェリー樽でタンニン成分が多く独特の深み、濃厚なフルーティさを与えるといわれる。
◆ポート/マディラ/コニャック/梅酒・カスク→甘み、まろやかさが増し、風味も付け加わる。
◆ワイン・カスク→各ぶどう品種の風味、赤ワインはウイスキーの色が濃くなる。
【生産国による分類】
スコッチウイスキー(スコットランド)
イギリス北部のスコットランド地方で製造されるウイスキーをスコッチウイスキーまたはスコッチと呼びます。最大の特徴は、ピート臭といわれる独特の香りです。
麦芽乾燥のためにピートと呼ばれる泥炭を燃焼させることで、麦芽に独特のスモーキーフレーバーをまとわせます。モルトW、グレーンW、ブレンデッドWがあり、モルトの蒸留所は約130ヶ所あり主な生産地区は下記6地区。
①ハイランド、約40の蒸留所があるが、ひとくちにこの地区の特徴をとらえることは難しい。北のプルトニーはアイラの酒質だし、ピートを焚かないマイルドな飲み口のグレンゴインまで多岐にわたる。
②ローランドは蒸留所の数が少ないがその中、オーヘントッシャンは今もローランド伝統の3回蒸留を守り続けライトボディながら穀物様のフレーバー強いモルトWを造っている。
③キャンベルタウンも数少なく、スプリングバルク(ロングロウ、ヘーゼルバーンも同時生産)、グレンスコシア、グレンガイルがある。スプリングバンクは、今でも1828年当時の設備、製法がほとんどそのまま使われ、“操業している博物館"といわれるクラシック蒸溜所である。製麦から瓶詰まで、全工程を行なっている唯一のスコッチ蒸溜所としても知られている。
④アイラは独特のスモーキーさ、ヨード臭、ピート香で有名で、すべての蒸留所が浜辺の近くに建っている。
●バナハーブン:島では最も軽やかな味わい。
●ボウモア:島の中心部に位置するせいか南のヘビーな酒と北のライトな酒の中間的味わいでアイラの入門酒。
●ラフロイグ:ヘビーな味わい。独自に多量の苔が含まれるピートを使ったり、新樽のバーボン樽で樽熟成(一般には古樽)したりと独自の味わいを醸し出している。チャールズ国王御用達モルトで唯一ワラントを授かっている。
⑤スペイサイド、スコットランドのモルトWを生産する蒸留所の半数近くが集まり、最も華やかでバランスの優れた名酒が揃っていて、風味の上ではアイラの対極にある。
●バルヴィニー:スペイサイドで唯一今でも伝統的なフロアモルティングを行っている。
●ザ・グレンリベット:政府公認の第一号蒸留所として有名。
●マッカラン:シェリー樽にこだわり、スペインで自ら新樽を作りシェリー業者に無料で提供、2~3年熟成後スコットランドに船積している。
●グレンファークラス:ここもシェリー樽にこだわっているがマッカランがオロロソシェリー樽にこだわるのに対し、それ以外のシェリー樽も使う。家族経営の数少ない蒸留所。
⑥アイランズ 島育ちであるという地理的な分類で、どれもがはっきりとした個性を主張している。
●ハイランドパーク:フロアモルティングを続け、麦芽の乾燥に若いピートを混ぜ焚き、個性を出している。
●スキャパ:ピートは全く焚かない、唯一無二のローモンド型スチルで蒸留。
ジャパニーズウイスキー(日本)
スコッチを手本とし、同様の製造方法をとってきたため比較的に似ていますが、大きな違いはウイスキーの定義がスコッチが「ウイスキーの品質を確保するための法律」なのに対し、日本は「酒税上の分類」という定義があり、ウイスキー(清酒も)が特級、1級、2級と分類されていました(1989年まで級別課税制度がありました)。
表は1978(昭和53)年の級別区分
()内の数字は酒税法基本通達上のものです。酒税法基本通達とは、国税庁が製造者に対し、税法の具体的運用に関して指導を与えたもの。実際の製品は通達に従った原酒混和率でつくられました。
【当時の級別表示ウイスキー】特級サントリー角瓶
1級ブラックニッカ、2級サントリーレッド
【級別廃止】
1980年代、日本は欧米との貿易摩擦(自動車・半導体など)が深刻化しつつあり、政府は欧米からの輸入品に優遇を与えることで、貿易摩擦の緩和を狙い級別廃止。酒税法の級別廃止により、実質的に輸入ウイスキーの日本参入の障壁が低下したことで、1989年以降はスコッチなどの輸入ウイスキーが台頭。加えて、1985年のプラザ合意を発端として円高ドル安が進行し、日本の消費者にとっては従来よりも安くスコッチウイスキーを飲める状況に(なんと、ジョニ黒が8.000円から半額になりました)。その後、2010年代に国産ウイスキーブームにより販売量が回復するまで、国産ウイスキーは厳しい状況が続きました。
【国産ウイスキーブーム】
2008年で底を打ったあと、ウイスキーは再び上昇気運に転じ、2013年には10万キロを超え、10年経った2018年にはピーク時の半分近くの17万キロリットルまで回復。そして現在の空前のジャパニーズウイスキーブーム。国内消費量だけでなく、海外輸出の統計を見ても顕著。国税庁の統計を見ると、10年前のウイスキー輸出金額が17億円だったのに対し、2022年は年間560億(うち中国196億、米国110億)と、なんと約33倍となっている。現在、清酒を抜いて日本産酒類として、ウイスキーが第1位になっています。
マイクロディスティラリーの誕生
日本のウイスキーのどん底時代の2008年2月、秩父でマイクロディスティラリーが誕生します。(株)ベンチャーウイスキーがイチローズモルトの蒸留を始め、ウイスキー消費の上昇気運に乗り、あっという間に急成長を遂げました。ウイスキーの国際的コンテストの「ワールド・ウイスキー・アワード2023」ではイチローズモルト&グレーン ブレンデッドジャパニーズウイスキーが世界最高賞を受賞。その後ベンチャーウイスキー秩父に遅れること7~8年、厚岸やマルス津貫、そして安積、ガイアフロー静岡などの蒸留所が新たな呼び方、クラフト蒸留所として誕生します。
ジャパニーズウイスキーの定義
2021年、洋酒製造メーカー数10社が加盟する日本洋酒酒造組合が、ジャパニーズウイスキーについての定義を発表した(4月1日施行)。これは、海外で「日本産ではない」ジャパニーズウイスキーが横行したため。
①原料は麦芽、穀類、日本国内で採水された水のみ。
②糖化、発酵、蒸留は日本国内の蒸留所
③アルコール度数は95%未満
④熟成は容量700ℓ以下の木製樽に詰めて3年以上。
⑤瓶詰めは日本国内、アルコール度数は40%以上。
⑥色調整のためのカラメルの使用は認められる。
【2024年2月近況】
開業準備中も含め約110カ所以上のウイスキー蒸留所が存在しているようです。輸出量は年々増え続けており、国産ウイスキーに対する海外からの注目度はまだまだ高い状態です。それに伴い、ジャパニーズクラフトウイスキー蒸留所の開業ラッシュが続いており、今までにない動きです。新国産ウイスキーのドラマが始まります…
インディアンウイスキー(インド)
インドは世界トップクラスのウイスキー消費国といわれています。モラセス(廃糖蜜)から製造したウイスキー風のお酒は、国民の暮らしに根付いたアルコール飲料としてインドでは欠かせないものになっています。
消費量は、年間で15億リットルで、日本の約15倍。なんと世界の消費量の約半分に迫るそうです。製造量でも世界有数の国となっていて、2017年の販売数ランキングにて、上位4位は全てインディアンウイスキー。そして、2022年には輸出されたボトル本数でも世界一位になっています。
【歴史】
飲まれ始めたのは19世紀、イギリスの植民地だった時代といわれています。はじめは、インド国内に駐留しているイギリス兵向けの輸入品が中心でした。しかし、時が立つに連れてインド内に蒸溜所が設立され、インド産のウイスキーが登場し始めます。当時の原料は、サトウキビから砂糖を生成する際に出る副産物である廃糖蜜(モラセス)を原料とし、ラム酒に近いものだったようです。
転機が訪れたのは、1982年アムルット蒸留所が建設されモルトを原料にしたウイスキーの製造が始まってから。
2004年には、インド初のシングルモルトアムルットが販売されますが、インド国内ではまだまだ、モラセスを原料としたウイスキーが主に消費されています。国外で高い評価を受けているのはシングルモルトのウイスキーのようです。これはEU内のウイスキーの定義が穀物を原料としているためかと思います。
【特徴】
前述の通り、モラセスをベースにした製法が主流であることと、熱帯気候による独特の味わいです。
熱帯気候は熟成が早まりインド独特のトロピカルな風味があると言う。
熟成の早さは、本場のスコットランドのウイスキーの3〜4倍ともいわれています。そのため、熟成年数が若いものや、ノンエイジの銘柄でも熟成感を味わうことができます。
【蒸留所】
①アムルット蒸留所 – Amrut Distilleries Ltd –
1948年創業、南部・カルナータカ州のバンガロールの標高の高い場所にあり「天空のウイスキー」という別名があります。代表銘柄のアムルット フュージョンAmrut fusionは、インドで初めての世に出されたシングルモルトウイスキーで数々の賞を受賞。世界のウイスキーを評価誌「ウイスキー・バイブル2010年」で100点中97点を獲得しています。
②ポール・ジョン蒸留所 – Paul John Distilleries –
1992年創業、西中部のゴアにある新しい蒸留所ですが、高品質のシングルモルトを造っており世界でも注目を浴びている蒸留所。熱帯地域のため、熟成が早く、熟成年数が5〜7年ほどでも十分な深い味わいを楽しめると言われています。
③ランプール蒸留所 – Rampur Distilleries–
1943年創業、北部ニューデリーの近くにあるインドでは最古の蒸留所。スコッチと同じくポットスチルを利用し、2回蒸留で製造。寒暖差の激しいヒマラヤ山脈で、バーボン樽を使って熟成し、シングルモルトを造っています。米国のウイスキー雑誌「Whisky Advocate」でベスト5のウイスキーに選ばれたことがあるそうです。
その他の銘柄:Mr. DOWELL’S No.1 / MONTE CASTLE
タイワニーズウイスキー(台湾)
台湾では、アルコール飲料関連事業に対する政府の規制が1990年にすべて撤廃されました。これが台湾におけるウイスキー人気の出発点となっています。
それまでのスピリッツ市場は、中国の白酒ブランド「金門高粱酒」にほぼ独占されていた(今でも台湾のベストセラー)。1990年代前半に輸入市場が解放されると、台湾の輸入スピリッツ部門ではコニャックが一大勢力となります。でも1995年頃になって、徐々にウイスキーの輸入量がコニャックに追いついてきました。
しかし1990年代の台湾市場を席巻したのは、スコッチウイスキーではなくて日本のウイスキーでした。主にサントリーのオールドと角瓶です。その後はシーバスやジョニーウォーカーなどの有名ブランドが市場のリーダーになりました。そうやって台湾のスピリッツ市場は、徐々にスコッチウイスキーが独占するようになり、そして今では、ウイスキー消費の半分はシングルモルトウイスキーが占めています。
【誕生】
台湾がウイスキー産業に参入したきっかけは、2002年台湾の世界貿易機関(WHO)への加盟。
台湾で飲料事業を行なっている「金車」という企業が最初にウイスキー造りに取り組み、そしてWHO加入から約3年後、台湾で初の蒸留所「カバラン蒸溜所」が完成しました。現在、拡張工事を経て、生産量で世界のトップ10に入るモルトウイスキー蒸溜所になりました。ちなみにカバラン(KAVALAN)の由来は、宜蘭県の原住民のクヴァラン族からきているらしい。
現在、台湾のウイスキー蒸留所は、カバランの他、もう一つあります。
2007年に蒸留を始めた南投(ナント)蒸溜所。「オマー」というブランドで元々ワイナリーを行っていたせいかラインナップは実に個性的で「リキュールカスクフィニッシュ」、「ライチリキュールバレルフィニッシュ」などが造られています。
【特徴】
亜熱帯気候であり、インドと同じく涼しいスコットランドと比べて熟成が早く進みます。そのため、年数をかけなくても十分熟成した深い風味を感じられます。温かいことによって熟成が進み、短期間でも樽の影響を受けやすくなります。
南投蒸溜所のように自社内のワイナリーの樽や果実のリキュールをつけた樽など、ここでしかできない樽をもっているのでライチや梅等の様々なリキュールを熟成させたフルーツカスクや、BlackQueenというぶどう品種を使ったワインのカスクのウイスキーなども特徴。